* 論理構成の作り方 *


目次

I. 全般
  A. 基本事項
  B. 構成の仕方
II. 書式
  A. 基本事項
  B. 数字の打ち方
  C. 項目上下の関係
 III.整合性
   A. 基本事項
   B. 論理的整合性
     1. 三段論法
     2. 並列関係
     3. 代替主張
   C. 法的整合性


I. 全般
 A. 基本事項
 論理構成を作るに当たって、一番重要なことはわかりやすいものを作るということです。論理構成はメモリアル主張全体の骨格をなすものですから、ある意味、論理構成の段階でメモリアルの善し悪しが決定してしまうと言っても過言ではありません。

 実際には、なかなか難しいのですが、どのように主張が展開していくのかという論理の流れをしっかりとつかみ、主張のうちどれが重要であるかというバランス感覚を常に働かせて、それを見ただけで請求の概要が分かるような論理構成を作ることが必要です。

 また、メモリアル全般を通じて言えることですが、専門用語(ターム)は出来るだけ使わないようにしてください。基本的に、誰が読んでも理解できることが目標です。

 最後に、基本中の基本ですが、最低でも、誰がどうしたという、主語・述語の関係ははっきりとさせてください。

 B. 構成の仕方
 一口に論理構成といっても様々な作り方があります。ここでは、論理構成の仕方の基本方針を紹介します。

 原告は自分の主張を何とかして通すことが必要ですから、請求から構成を考えていくという、トップダウンで構成していくのに適しています。
 具体的には、請求を基本として、その請求を通すために必要な主張は何かを考え、さらに、その主張を通すために必要な根拠は何かという形で、大まかな論点を考えてから、徐々に細部の論点を詰めていくやり方を言います。

 被告は原告のあらゆる主張を否定することが必要ですから、根拠から構成を考えていくボトムアップで構成していくのに適しています。
 具体的には、国際法の実状を調べ上げた後、必要な論点を全て洗いだし、重要なものから順に構成していくやり方を言います。


II. 書式
 A. 基本事項
 書式も、わかりやすい事が基本です。論理の流れがより分かりやすくなるような書式にしてください。

 
B. 数字の打ち方
 数字は、個々の主張の関係を示すために使います。項目間の関係がわかりやすければ良いですが、原則として次の形式に従ってください。

  ・1番大きい項目:大文字のローマ数字   T.U.V.
  ・2番目の項目 :大文字のアルファベット A.B.C.
  ・3番目の項目 :アラビア数字      1.2.3.
  ・4番目の項目 :小文字のアルファベット a.b.c.
  ・5番目の項目 :小文字のローマ数字   i. ii. iii.

 基本的に、4番目くらいまででとどめることが多いでしょう。あまり項目を増やすとわかりにくくなります。

C. 項目上下の関係
 請求内容から順に、上の項目は下の項目によって立証されます。逆に言うと、下の項目が立証されることによって、上にある主張が通るということです。
 具体的には、1.2.3.の項目によって、Aの項目が立証され、A.B.C.の項目が立証されることによって、Tの項目が立証され、T.U.V.の項目が立証されることによって、請求内容が満たされるということです。
 このことを明確にするために、下位の項目と上位の項目の結論は原則として一致させる必要があります。

 <ポイント>
・請求内容の文言は出来るだけそのまま使う。
・上位項目は大まかな内容、下位項目はその細かな説明とする。
・出来るだけ簡潔にする。

 
<具体例>
 請求内容が下のような場合

「国際法上、イラリオはマニ島に対して正当な領域主権を持ち、1998年5月6日にマニ島で取った行動は何ら国際法に違反しない。」

 ・悪い例
T.イラリオはマニ島に対して正当な領域主権を持つ
 A.イラリオは警察権行使により、マニ島に対する主権を確立している。
U.イラリオがマニ島でとった行動は何ら国際法に違反しない。


 この例では、一番大きい主張は請求内容に揃えてありますが、「主権の確立→正当な領域主権」と繋がるとは限らないので、下線部で結論が食い違っていて、A.によってT.が立証させることがはっきりとしません。
 ここでは、「A.イラリオは警察権行使により、マニ島に対する支配権を確立しており、正当な領域主権を持つ。」として、結論を揃えるべきです。


III. 整合性

 A. 基本事項
 論理構成をわかりやすいものとするには、整合性が最も重要です。全体の構成を眺めてみて、整合性に矛盾があれば、通る主張も通りません。
 以下の項目を、論理構成を自分でチェックするために使ってください。

 
B. 論理的整合性
 論理の流れをはっきりとさせるためには項目間の整合性が重要です。

  
1. 三段論法
 三段論法は、一つの主張を論証するのに使う方法です。規範・当てはめ・結論の順で構成されるため、論理関係のチェックが容易になります。
 通常は、この3つが論理構成上に現れることはありませんが、論理構成を作るに当たっては、この流れの組み合わせを意識して作ってください。
 論理構成に現れる際は、規範は当てはめの、当てはめは結論の前提となります。

<例>
 空が抜けるよう蒼くになると、季節は夏である。(規範)
 今日は空が抜けるように蒼い。(当てはめ)
 今日は、夏である。(結論)

  
2. 並列関係
 論理構成における並列関係は、「独立の項目でいずれも別々に成立するが、全て成立しないと主張が成立しない」項目間の関係を言います。
 通常の用語の使い方とは少し異なるので注意してください。

<例>
 
II.C.の例を使います。

U.イラリオがマニ島でとった行動は何ら国際法に違反しない。
 A.イラリオがガウチの船舶を追跡したことは国際法に違反しない。 
 B.イラリオがガウチの船舶に対して発砲したことは国際法に違反しない。
 C.イラリオがガウチとカザランの調査員を拘留したことは国際法に違反しない。

 この例では、A.B.C.の全てが言えて初めて、Uが立証されるという点でA.B.Cは並列関係となっています。

  3. 代替主張
 代替主張は、「独立の項目で、いずれかが成立すれば主張が成立する」項目間の関係を言います。「仮に」の主張とも言います。

 代替主張で重要なことは、譲る内容は何かをはっきりさせることと、それを譲っても主張が成り立つかどうかを考えることです。

 <悪い例>
U.イラリオがマニ島でとった行動は何ら国際法に違反しない。
 A.イラリオがガウチの船舶を追跡したことは国際法に違反しない。
 B.仮に、イラリオがガウチの船舶を追跡したことが国際法に違反するとしても、発砲したことは国際法に違反しない。

 この例では極端ですが、2で見たとおり、A.B.の関係は並列関係なのでA.が通らないと請求が通りません。

 
C. 法的整合性
 いくら、論理的に正しくても、法的に正しくなければ意味がありません。三段論法で言えば、規範の部分が言えるかどうかをチェックしてください。


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